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詳しくはこちらをご覧ください。

 県指定文化財 「穂積家住宅」

茨城県高萩市にあるこの住宅は、私の友人が当主であるためいろいろな関わりを持ちました。
この文化財である住宅が、市の文化財から、県の文化財へと保存されていましたが、老朽化のため今回大規模に改修される事になり、現在保存工事の最中です。そこで、皆様のご参考になればと思い、現在の保存工事の状況をご報告いたします。
普段は無料で参観できますが、現在は工事中ですので参観できません。工事は約2年かかる予定ですのでそれまではこちらをご覧ください。

○住宅概要
この住宅は、江戸時代後期の豪農の住宅です。主屋は五段茅葺き屋根の寄せ棟造りで1789年の建築です。敷地内にはその他に、長屋門・土蔵・庭園・水路などがあります。
その当時穂積家を支えていた財政基盤は、農耕・酒造・造林などの多角経営でした。敷地内に水路がありますが、それは酒造用の水車を回転させるためでした。また、池のある庭園は、当時、各地の文人を招いて詩や歌の会を催した生活の一端を偲ぶ事が出来ます。

長屋門と土蔵


    敷地内は回遊できるよう
になっています。
庭園の中央部分には
ひょうたん型の池があります。
長屋門脇にある前蔵。
(内部は板張りになっています)
池には太鼓橋や一枚岩の橋が
かかります。この庭は創建当時と
変わりません。


○保存工事の様子

工事は(株)石川工務所の手で行われています。
主屋をすっぽり足場で囲い、屋根をかけて現在は解体工事の最中です。
板一枚柱一本にも番号をつけてプレハブの倉庫に整理して保存しています。
大変な手間と時間がかかります。ですから、2年から3年かかるのも、仕方ないのかもしれません。

土間の煙だし小屋根の部分 建物全体を足場で囲み、
仮設の屋根もかけています。
基礎となる礎石の様子。 部材すべてにこのような番号札を取り付けて保管倉庫に保存し、使用できるものは再建の時に使用します。
小屋の梁組みの様子。 梁は太く丈夫で一部のものを除くとほとんどそのままの状態でした。


平成13年3月29日の工事の様子

屋根や壁の骨組みだけを残し、
基礎から上の部分をジャッキ
アップしています。
土台部分に鉄骨をいれ、建物全体が地面から約1.2mほど上げてあります。この後コンクリートの基礎を作り、それに建物をのせます。
衣装蔵の工事の様子。これは屋根裏の部分です。天井裏は盗難防止のため鉄板が張ってあります。 衣装蔵の土壁の部分。
竹をタテヨコに組んで縄で縛り、
その上に土を塗ってあります。


平成13年10月の保存工事の様子

外部の木造塀の工事中。 内部の補強はスジカイではなく
板を斜めに張って強度を
出すようにしています。
梁は使用できる部分は使用し、腐って使用できない部分は、同材種のもので取り替えました。 煙出しの部分。
ほとんど取り替える部分が
なく当初のままです。


平成14年2月の保存工事の様子

屋根の瓦葺職人さんは
福島から来ています。
瓦葺の軒先の様子。
足場に上がり屋根を見ていると
まるで山のように見えてきます。
同時に工事中の衣装蔵の様子。
こちらはまだ工事用の屋根が
かかっています。

◆以前から、古い建築が好きでしたが、最近は新建材をはじめとしてぺらぺらな建材が多く、見た目は良くてもなぜか好きになれず、より古い建築に興味がでてきました。
やはり建築に使用する材料に限らず、材料は重いものがいいのでは?などと思っています。まあ、重いと運ぶにも加工するにも大変なんですが、それに変えられないよさがあると思うんです。
そろそろ、20年から30年で使えなくなるような住宅ではなく、100年以上使えるような住宅を考えてみませんか。この穂積家の梁を見てください。これ一本だけでもその存在感がたまりません。(この梁はもらえないだろうなあ)
いつも新しい建物を造っているためか、年齢のせいか、以前にも増して古いもののよさが身にしみています。
今後とも、この保存工事の様子はお伝えしたいと思っています。お楽しみに。

2000年10月17日現在は、写真のような状態です。これからさらに屋根の解体や柱の解体修理などが行われます。
2001年3月の段階では、コンクリートの基礎を造るため、建物全体をジャッキアップしています。また、建物に付属する衣装蔵の改修も行われています。
2002年2月には、主屋の工事は外部はほぼ終了し、内部にかかっています。大きな茅葺きの屋根が美しく日本建築の素晴らしさを再認識しました。
同時に工事中の衣装蔵は外部全面が漆喰塗りの為乾燥に時間がかかり、完成にはもうしばらくかかりそうです。

○穂積家の古写真
旧家ですので、創建当時の住宅の様子や主な行事の様子が、屏風や写真として残されていました。一部ですが当時の様子が分かるものを掲載しました。

創建当時に屋敷の様子を描いた屏風、
長屋門は後で変更されたが、
蔵などは当時のままであるのが
わかる。
左の屏風を拡大したもの。
屋敷の形はほぼ現在のまま。
庭内にあった現在は無い離れの前で、現在の当主の祖父の結婚式の様子。
(大正時代?)
お祝い事の様子。
(詳しくはまだお聞きしていないので
後日ご報告いたします。)